高齢被保護者の「つながり」の力

「公的扶助研究 第266号」連載:「健康管理支援事業」を考える 掲載記事を紹介します。

「公的扶助研究 第266号」では、高齢被保護者の「つながり」の力に着目しています。

被保護者健康管理支援事業では、利用者のフェイスシートを作成し活用することを推奨しています。利用者の社会背景や生活環境は、健康支援にどのように役立つのでしょうか。

国内約40市町村が参加した「日本老年学的評価研究(JAGES)」の2016年調査の回答者のデータ(93280人、うち生活保護利用者は1093人(1.17%))を用いた分析です(Kino S,Nishioka D, Ueno K, et al. BMC geriatrics. 2022)。

調査対象の高齢者を生活保護利用者と非利用者のグループに分類し、高齢者の精神的な健康に着目し、うつ症状の程度を調査したデータを分析したところ、利用者におけるGDSが5点以上のうつ症状ありの人は50.1%でした(非利用者では20.7%)。

統計的な手法を用いて、社会背景や健康度の違いに関して分析した結果、教育歴が短い人、婚姻していない人に、うつ症状が多くみられました。

また友人・知人に会う頻度や、スポーツクラブや趣味の会への参加頻度といった「つながり」や「社会参加」に関連する項目に着目し分析した結果、「つながり」が乏しい状態によってうつ症状の割合が引き上げられることが示唆されました。

教育歴や婚姻などの要因は利用者が今から変えることは難しいですが、「つながり」を持つための支援を行うことで、精神的な健康度が改善しうる可能性があります。

また、生活保護の利用継続および終了の関連要因をつながりに着目して分析したところ、地域への愛着や地域での役割がある人ほど、そうでない人と比べて生活保護利用を終了しやすいことが示唆されました。(Kino S, Nishioka D, Ueno K, et al. Archives of Gerontology and Geriatrics. 2022)

このように、人とのつながりや社会参加といった社会背景は、高齢利用者の健康状態を維持・向上するだけでなく、生活保護の利用終了にも関連する要因です。

ぜひケースワーカーのみなさんには、利用者の「つながり」の実態を支援現場で評価していただくとともに、福祉事務所で現実的に収集可能なフェースシートの項目や利用者の「つながり」づくりを通じた包括的な支援をぜひ一緒に考えていただければ幸いです。

西岡 大輔(にしおか だいすけ)