「公的扶助研究 第262号」掲載記事を紹介します

2021年1月より、被保護者健康管理支援事業が、各福祉事務所を中心に開始されており、本事業では、データを活用した支援の実施が強調されていますが、データの利活用の方法に関してはノウハウが蓄積されてきませんでした。そこで本稿では、福祉事務所が有するデータを用いた具体的な分析結果を紹介し、エビデンスに基づく健康支援のあり方を議論する資料を提供しています。前号と重なるところもあるかと思いますが、改めてご紹介します。

①頻回受診

本事業の重点課題の一つに頻回受診(同一医療機関同一診療科へ月15回以上受診)対策があります。東京と大阪の2自治会の利用者の基本データと医療扶助レセプトデータを結合し、頻回受診をしやすい利用者の特徴を明らかにすることを試みました。

その結果、「ひとり暮らしの利用者」「就労していない利用者」に頻回受診が生じやすいことが示唆されました。ひとり暮らしの利用者では家庭というコミュニティがありません。就労していない利用者では職場というコミュニティがありません。こういったコミュニティからの排除が頻回受診という行動につながっている可能性を示しました。

また個人医療機関では医療法人の医療機関と比べて頻回受診が生じやすいことも示唆されました。これは医療機関が利用者に受診を進める経済学の”医師誘発需要”の可能性と、医療機関が居場所になっている可能性が示唆されました。

(Nishioka et al. BMJ Open. 2020)

②糖尿病

慢性疾患の重症化予防も重点課題の一つです。上記の関連要因を分析したデータを活用し、新たに糖尿病と診断されやすい利用者の特徴を、特に若年利用者に注目して明らかにしました。

結果、頻回受診同様「ひとり暮らしの利用者」「就労していない利用者」に糖尿病の新規診断を受けやすい傾向がみられました。コミュニティから排除される孤立の状態が、健康な暮らしを阻み、ストレスを高めることで糖尿病に至りやすくなるのかもしれません。

(Nishioka D et al. J Diabetes Investig. 2021)

これらの研究結果の留意点として、独居や不就労といった社会的要因が頻回受診や糖尿病の新規診断に関連していることを示しましたが、必ずしも因果関係には言及できません。

しかし、多くの先行研究の成果をもとに考えれば、福祉事務所が孤立しがちな利用者に社会とのつながりを提供することができれば、より効果的な健康支援を実現できる可能性があります。

利用者の健康で文化的な生活のためには、保健医療部門による患者教育、食事・生活指導、服薬指導といったアプローチだけでなく、福祉事務所が従来実施してきた支援の枠組みで利用者に社会的なつながりを提供できるような取り組みを併せて実施することが望ましいと考えられました。

西岡 大輔(にしおか だいすけ)

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