「公的扶助研究 第265号」掲載記事を紹介します

「公的扶助研究 第265号」では、健康とは切っても切り離せないお金について述べています。生活扶助費の増減は利用者の健康や健康に関わる行動にどのように影響を及ぼすのでしょうか。

本研究では、旧基準の児童養育加算の減額に注目しました。児童養育加算の対象となる子どもが3歳になったタイミングで、加算が減額され世帯の所得が月額5000円減少します。これをある種の”実験”ととらえ、利用者に対する生活扶助費の減少が医療扶助費に与える影響を統計的な手法で検討しました。(Nishioka D.et al. J Epide-miol Community Health. 2022)(西岡大輔. 東京大学大学院医学系研究博士論文. 2021)

5つの福祉事務所が管理するデータを取得し、生活保護を利用し第一子を養育しているすべての世帯の月ごとの生活扶助費と医療扶助費を算出し、2016年4月から合計30か月間観察した結果、第一子が3歳(36ヶ月)になる時点の生活扶助費の減少前後では、世帯の医療扶助費は平均24,857円増加すると推計されました。

この研究は、生活扶助費の減少が、短期的には月あたりの世帯の医療扶助費の増加をもたらすという因果関係が確からしいということを支持するものです。生活扶助費が減少するタイミングを適切に把握し、健康状態や受診行動の変化に注意を払い必要な支援を行うことで、利用者の健康を維持し、行政の財政負担を緩和できる可能性が考えられます。

しかし、本研究が示した結果については将来的な課題も多いです。生活扶助費の減額が世帯の医療扶助費に与える長期的な影響やそのメカニズムは未解明な部分が多いですし、利用者の健康状態に与える影響に関する検証も十分とは言えません。5自治体のみで検証した結果であるため、日本全国に一般化することも困難です。

今後の研究の展開に注目していただくとともに、3歳になる子どもを養育する生活保護利用世帯の状況や考えうるメカニズムなどに関する現場の支援経験をぜひ教えていただければ幸いです。

西岡 大輔(にしおか だいすけ)

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