2022年9月23日(金祝)、無料低額診事業(無低診)研究フォーラム「統計データと事例から考える無料低額診療事業の可能性」をオンラインにて開催しました。Twitterの #無低診フォーラム から当日の議論のダイジェストをご覧いただけます。
2時間30分という長い時間の開催でしたが、常時200名を超える方にご参加頂きました。とても濃く、学びの多い時間となりました。
第1部では、利用者データ分析の結果を報告し、以下のことに注目が集まりました。
・利用者の方では約4割の方に過去1年間の受診控えの経験がありました。無料低額診療事業を知っていたかどうかで比べても、受診控えの経験はほとんど変わらず、無低診を周知するだけでは医療機関までの障壁は解消されないことが示唆されました。
・無低診利用者のうちの半分は、今までに健康・生活の困難を誰にも相談していないこともわかりました。医療機関で人々の困難が顕在化し、医療ソーシャルワーカーとの面談や無低診という制度をきっかけに始まる支援があることが示唆されました。
第2部では、事例を通じた無低診の可能性と課題、医療ソーシャルワーカーの葛藤をお話いただきました。
5名の方の発表を通じて、無低診はまだまだ認知度の低い事業であること、多くの方に現状を知っていただくこ必要がること、無低診の実際の活用方法や課題を知ることができました。特に注目が集まったのは、
・無低診の利用基準が各病院で異なるため、医療機関間の連携が困難であること
・医療機関の機能により、診療内容によっては無低診で対応できない病院へ移らざるを得ない状況があること
・医療機関における診察に経済的な負担がなくても、調剤費(薬代)を支払うことが困難で治療を継続することが難しいこと
・歯科事業所では無低診の実施機関が少なく、歯科治療への対応が困難となっていること
・無保険の外国籍の方への対応におけるさまざまな課題があること
など、さまざまな意見や問題意識が共有される時間になり、多くの反響をいただきました。
統計データを用いて客観的に現状を把握し、数字では把握しきれない部分を実践報告を通して見つめることで、さまざまな切り口から無低診を考える機会となりました。
何より、今回のフォーラムでは現場で関わる方の葛藤に多くに共感も寄せられました。支援が必要な方を目前にしながら、十分に支援できない状況が支援者の心を疲弊させるといったご意見もありました。
必要な制度を有効に活用するための要因の一つは支援者です。さまざまなニーズをもつ方へ支援していく上で、支援者同士の”つながり”も重要です。この研究フォーラムが今後の支援者同士の”つながり”の場となっていけば嬉しいです。
本フォーラムの内容は活動報告として論文化する予定です。また多くの皆さんの目に触れていただける日を楽しみにしています。そして、反響をいただいた「第2回無低診フォーラム」の開催に向けて準備を進めてまいります。
西岡 大輔(にしおか だいすけ)