西岡大輔.研究にトライ! 医療介護の現場の疑問を研究して患者のケアに役立てよう(第2回) 研究疑問のつくりかた.民医連医療 2023;(605):54-55. から内容を抜粋してお届けします。
前回はなぜ研究をするのか?についてまとめました。第2回は、臨床現場での疑問に気づく方法と、研究疑問を深めるために必要な論文の探し方のコツを紹介します。
感情が揺らぐとき=疑問に気づくチャンス
臨床の現場で、自分にとって当たり前、日常的と認識していること以外の事象が発生すると私たちの感情は揺らぎます。感情の揺らぎには、喜び、悲しみ、驚き、怒り、あきれなどさまざまあるでしょう。それは第1回で確認した、私たちが”正しい”と信じている価値観や信念とのズレが背景にあります。つまり、感情のゆらぎは私たちが研究を始めるきっかけになるのです。
しかし、日々の臨床の現場で感情が揺らぎ、疑問が浮かんでも、全ての疑問が研究につながっていくわけではありません。私たちが気になった特定の事象は、世の中の誰かが疑問に思い、すでに研究されている可能性があるからです。
既存研究の探し方
現在実践されている研究や発表された論文を検索するためには、複数の文献検索サイトを検索するのが近道です。たとえば以下のような文献検索エンジンが活用できます。まずは、気になった言葉を組み合わせて検索してみましょう。
PubMed(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov):医学論文(英語)を検索する場合
Google Scholar(https://scholar.google.com):言語を問わず幅広く研究論文を検索する場合
CiNii(https://cir.nii.ac.jp):日本国内の論文や研究課題を検索する場合 など
既存研究が解決してくれない場合は研究チャンス
調べてみたら、ご自身の疑問は解決されましたか?文献を検索し、精読するなかで疑問が解決されるならば、研究を実践する必要はきっとないでしょう。誰かの疑問が研究された結果、同じ境遇にある世界中の人々に還元されていくのです。
もし疑問が解決されなかった場合には研究のチャンスです。臨床の疑問(クリニカル・クエスチョン)から研究の疑問(リサーチ・クエスチョン)を立ててみましょう。誰にどのような研究をするといいでしょうか?研究疑問によって、実施すべき研究は異なります。
研究疑問を解決するために、第3回は研究疑問に応じた研究計画の立て方をご紹介します。