「総合リハビリテーション」掲載記事を紹介します。
西岡大輔.リハビリテーションにおける「社会的処方」とは : リハビリテーション専門職への期待.総合リハビリテーション. 2023;51(6):639-644.
総合リハビリテーション51巻6号は、「社会的孤立とリハビリテーション」のテーマで特集が組まれています。”「社会的処方」とは~リハビリテーション専門職への期待”という記事を書きました。ここでは、特に後半部分に紹介した、リハビリテーション専門職による「社会的処方」の実践に注目し、住民の孤立・孤独予防活動事例を抜粋してみます。
みえ社会的処方研究所の水谷祐哉さんは理学療法士です。水谷さん医療と介護の専門職が常駐し、医療や生活に関する悩みに無料で応じるカフェや、スマートフォンなど日常生活に関わる機能の使い方を解説するなかで困りごとにも応じるような講座などを開き、住民同士のつながりを熟成する「社会的処方」に取り組んでおられます。
リハビリテーション専門職の方は、医学モデルおよび生活モデルによる支援を統合した国際生活機能分類(International Classificatiom of Functioning,Disability and Health: ICF)の概念に精通しています。また、リハビリテーション専門職の活躍の場は医療機関にとどまらず、住民の生活の場まで幅広く横断的です。
急性期から回復期、生活期までの住民のニーズに伴走し、その人の心身機能の維持や参加の機会の確保、活動の幅の広がりに貢献しておられるので、医療と生活の双方の立場で患者の日々の暮らしの支援をされているリハビリテーション専門職の方は、シームレスな支援が行われにくい医療と生活の場の橋渡し役になることができると期待しています。
「社会的処方」はまだまだエビデンスが乏しく、その活動により住民の社会的孤立や健康に与える影響は十分には明らかになっていません。今後の「社会的処方」のあり方に関して、引き続き関心を持っていただけると幸いです。
西岡 大輔(にしおか だいすけ)