【寄稿】プライマリ・ケア掲載記事「プライマリ・ケアとソーシャルワーク その親和性と協働の可能性 シンポジウム開催報告」

西岡大輔,近藤敬太.プライマリ・ケアとソーシャルワーク その親和性と協働の可能性 シンポジウム開催報告.プライマリ・ケア.2024;9(3):44-47.

プライマリ・ケアとソーシャルワークは、どのように協働が可能なのか、日本医療ソーシャルワーカー協会の第71回全国大会で、日本プライマリ・ケア連合学会の協賛のもと、シンポジウムが開催されました。シンポジウムの開催報告を通して、プライマリ・ケアとソーシャルワークの親和性と協働の可能性について論じ、紹介しました。

医療ソーシャルワーカーは、退院援助にかかわる専門職のように感じられることもありますが、それだけではなく、退院援助を診療報酬に規定された業務として行いつつ、援助対象者の健康やウェルビーイングにマイナスの影響をもたらす構造的な健康の社会的決定要因にアプローチしている専門職です。

プライマリ・ケアのアプローチの理論の元になっているシステム理論は、ソーシャルワークの発展にも寄与した理論であり、共通の言語を持っています。調整のハブとなり周囲に働きかけることが専門性の一つになっていることも共通しています。

プライマリ・ケアとソーシャルワーカーは親和性が高くその役割が重なる一方、医療ソーシャルワーカーだからこそできて、プライマリ・ケア従事者には難しいことがあることを、シンポジウムでお話しました。地域住民の健康の権利を守るためのケアの提供者として、お互いの武器を存分に発揮できるよう相互理解をしていることが大切であること、プライマリ・ケアにはソーシャルワークが必要であること、また反対にソーシャルワークにとってもプライマリ・ケアが必要な存在でありたいということをお伝えしました。

また協働の実践例として、コミュニティホスピタルでの実践報告も行いました。

コミュニティホスピタルに明確な定義はありませんが、プライマリ・ケアを担う総合診療を中心に、今までの病院に求められたケアミックスの外来や病棟機能だけでなく、在宅医療や住民と協働した地域活動まで取り組む病院です。コミュニティホスピタルでは、住民、在宅療養をされている方、さまざまな病棟で入院する患者さんを含めて幅広く対応する必要がある為、病院の前方支援や後方支援だけでなく患者さんや地域のさまざまなニーズといった、医療ソーシャルワーカーの専門性が最も発揮される場所であると紹介しました。

プライマリ・ケア医と医療ソーシャルワーカーがどのように協働しているかについて話をしたり、医療ソーシャルワーカーから見たプライマリ・ケア医が地域全体をオーケストラに見立てた場合に指揮者のような存在であることなど、ソーシャルワークからみたプライマリ・ケアについての報告もあり、価値を共有するすばらしい機会でした。

西岡 大輔 (にしおか だいすけ)