Our paper, “Changes in health-related quality of life among impoverished persons in the Free/Low-Cost Medical Care Program in Japan: Evidence from a prospective cohort study” has been published in the Journal of Epidemiology 🙂
アクセプト版論文が早期公開されました!実は、この研究はとても思い入れのある論文です。
私が大学院進学を決意した臨床疑問が元になっています。
経済的に困窮する患者の医療費の窓口支払いを医療機関が独自の基準で減免できる”無料低額診療事業”の利用者のコホート研究の結果です。医療と福祉の多職種で築き上げてきた成果としてとても感慨深いです…!
時間がかかったこと、研究の規模が小さいことはもちろん否めませんが、大学院修了とともに形になったことにはひとつのマイルストーンとして自分にとっても意義深いです。国内初!の無料低額診療事業の実態評価の英語論文でもあります。
無料低額診療事業(無低診、Free/Low-Cost Medical Care: FLCMC)は、国内の実施医療機関において、患者の医療費の自己負担分の支払いを医療機関の基準によって減免できる社会福祉制度です。皆さんご存知でしたか?済生会や民医連などの医療機関が実施しており、歯科領域でも注目されています。経済的に困窮する患者の医療機関での支援方法のひとつとして注目されていますが、実際の運用状況や効果については明らかになっておらず、意義や効果を疑問視する政策議論もみられました。
この研究でわかったこと
①無低診の利用者では、低所得であるほど身体的健康度と精神的健康度が改善していた
②ひとり暮らしの無低診の利用者では、身体的健康度と精神的健康度が改善しにくかった
ひとり暮らしの無低診の利用者では、医療費に対する経済的な援助以外にもさらなる社会的な援助を必要とする可能性がありました。経済的な支援では解決し得ない生活困窮があるのかもしれません。本研究は京都の1法人の分析結果であり、今回の結果を日本国内に一般化し、援助方法を検討するための追加的な検証が求められます。
本研究は、2018年度日本プライマリ・ケア連合学会研究助成制度:チーム研究助成(2018-2019)を受けて実施しました。成果が出るまでに長くかかりましたが、厚く御礼を申し上げます。
<書誌情報>
Nishioka D, Tamaki C, Fruita N, et al. Changes in health-related quality of life among impoverished persons in the Free/Low-Cost Medical Care Program in Japan: Evidence from a prospective cohort study. J Epidemiol. 2021. https://doi.org/10.2188/jea.JE20210005