*講演*生活保護利用者の頻回受診に関する要因:個人と医療機関の特徴

2022年8月6日 日本医療福祉政策学会2022年度研究例会(第6回) 野村記念奨励賞受賞記念講演にて、受賞論文「生活保護利用者の頻回受診に関する要因:個人と医療機関の特徴」の報告と、関連研究についてお話しました。

生活保護利用者の「頻回受診」は古くから議論されていましたが、頻回受診の実態や関連要因についての検討はなされていませんでした。この研究では、当時までほとんど研究利用されてこなかった生活保護行政のデータを活用し、生活保護利用者による医療機関への月15回の受診=頻回受診に関わる要因を検討しています。

この研究の結果として、頻回受診には、「独居」や「就労していないこと」が関連していた他、医療機関側の要因としては個人医療機関で生じやすいことが示されました。これらのことから、背景に社会関係から排除された状況や困難がある可能性が示唆され、医療機関が「居場所」や「つながり」になっている可能性があります。

更に関連研究として、福祉事務所がもつ生活保護管理データと、生活保護利用者の医療費に関する自治体の支払い記録である医療扶助レセプトデータを結合して分析した結果を紹介しました。

その結果、新たに糖尿病と診断される割合が、独居や不就労の成人利用者において多いこと

生活保護利用世帯の子どもの気管支喘息などの慢性疾患による受診は、ひとり親世帯において多いこと

歯科サービスの利用は、外国籍の利用者や精神障害の認定を受けている利用者に多いことなどが示されました。

これらの結果は、等しく最低生活が保証されている集団であっても、個人の社会的要因によって健康や健康行動に格差が生じている可能性を示唆しており、現行の生活保護制度では利用者の健康な生活が十分に保障されていない可能性が考えられました。

研究論文や講演の資料はこちらにありますので、ご関心のある方はぜひご覧ください!

西岡 大輔(にしおか だいすけ)