研究にトライ!連載 第3回:研究計画の立てかた

西岡大輔.研究にトライ!医療介護の現場の疑問を研究して患者のケアに役立てよう(第3回) 研究計画の立てかた.民医連医療. 2023;(606):56-57. から内容を抜粋してお届けします。

連載の第3回は、研究疑問を見つけたあとに、その疑問を解決する戦略の進め方を紹介しています。具体的には、「研究計画」の立てかたと、その研究計画の肝となる「研究デザイン」、そして倫理審査について紹介しました。

研究を実施する人は、研究するテーマがなぜ重要で、研究により何を明らかにしようとするのか、そしてその疑問を解決する方法をあらかじめ整理しておくことが求められます。それが研究計画書です。

研究計画書にまずは記載することは、その研究が行われる背景です。今までの研究や報告などを文献を通じて調べた結果、論理的に導かれたまだ明らかにされていない「ギャップ」を明確にします。自分の臨床疑問から導かれた研究疑問に関して、以下の順で4つの段落に分けて記載をするといいでしょう。

  1. そのテーマの重要:なぜそのテーマに関する研究が今求められているのか?をデータや社会情勢などから解説していきます。
  2. 既存の研究が明らかにしてきたこと:さらに深掘りして、今までの研究で明らかにされたことを解説します。
  3. 既存の研究が明らかにできていないこと:一方で、まだ不足している研究はどのような研究で、どのような研究と日々の実践の「ギャップ」があるのか、何がわかっていないのかを明示します。
  4. 研究の目的:どのようなセッティングで、まだ明らかでないことを明確にしようと試みるのか、その目的を端的に記述します。

背景を記載したら、次は研究の方法を記載します。研究の方法の肝であり、まず最初に明示するのが、どのような研究デザインを採用するか、です。そして引き続き、疑問を検証するためデータをどのような手法で集め、どのような分析をするのかを記載していきます。またそれを誰が担当するのかといったことも記します。

押さえておくべき研究のデザインについて、簡単に概説したものが下図です(私見を含みます)。ここでは、介入研究に関する説明は省略しています。

他にも、研究参加者からの同意を得る方法や、同意の撤回方法、問い合わせの窓口、データの保管方法や保管期間など、細かく記載をすることが求められます。

研究計画書が完成したら、倫理審査を受けましょう。倫理審査は計画された研究に倫理的な問題が含まれていないかを確認するだけでなく、研究そのものの質や実行可能性を高めてくれます。所属している医療機関・法人に倫理審査委員会がある場合には、その委員会の手順に沿って進めましょう。ない場合には、外部の大学や学会に依頼しましょう。

以上、研究計画の立てかたについてご紹介しました。研究計画書を書くことは難しく感じますが、書かなければ何も始まりません。書きかたに詰まる場合には、近くの研究者や経験者にぜひ相談してみてくださいね。もちろん私たちの教室にご相談いただいても構いません!

西岡 大輔(にしおか だいすけ)