「気候変動と健康格差」に関して寄稿しました

ジェネラリスト教育コンソーシアム第17巻 「ジェネラリスト×気候変動 臨床医は地球規模のSustainabilityにどう貢献するのか?」に、気候変動と健康格差に関するテーマで寄稿論文を執筆しました。

近年、地球環境システムの持続可能性に対して警鐘がならされています。特に、気候変動による人々の健康への影響が懸念されるようになってきました。

米国では、大気汚染による喘息や心血管疾患の増加、アレルゲンの増加によるアレルギー関連疾病の増加、気温上昇等による災害関連死、暑熱関連疾患、死亡の増加等、さまざまな気候変動の健康影響のメカニズムが紹介されています。(Centers for Disease Control and Prevention.2021)

気候変動は多様なメカニズムにより健康に影響を及ぼしますが、その影響の程度は個人をとりまく社会的な要因によって異なることが想定され、健康の格差を引き起こすひとつの要因になり得ます。

今回紹介した、気候変動によりもたらされうる健康の格差のパターンは2つです。

まずは、気候変動の影響が国内でばらつくことによる地域格差です。温暖化の進行により媒介蚊が繁殖することで輸入感染症が常時みられる地域が生み出されることも想定されます。暴風雨や洪水、熱波等の極端現象の地域格差が生じることで、ある特定の地域でより自然災害の影響を受けやすくなります。

もう一つは、個人が置かれている社会経済状況による健康格差です。COVID-19の流行下でも、人々の健康状態や予防行動の程度に、個人および地域の社会経済的な状況による格差がみられることが明らかになってきました。

このように、気候変動も個人の社会経済状況の要因を介して健康格差をもたらす可能性があります。他にも、自然災害による健康影響や災害関連死も、個人の社会経済状況によって格差があります。署熱関連死亡の予防に重要な冷房等の家財も、経済的に困窮している人ほど所有していない状態にあります。

過去、現在の自然災害や感染症の流行などから学び、健康の格差への迅速かつ効果的な対応を検討するための重層的なデータ整備とモニタリングが重要です。

西岡 大輔(にしおか だいすけ)