【御礼】学部生の卒業論文に研究を引用&研究内容についてご質問いただきました

つい最近の嬉しかった&とても刺激をいただいた話です。

西澤寛貴,西岡大輔.無料低額診療事業実施施設の都道府県間の差に関する研究.社会医学研究.2023;40(2);185-191.

上記の論文紹介のエントリーを見ていただいた大学生の方から、ラボのホームページ経由で研究内容についてご連絡・ご質問いただきました。とても筋の通った、素晴らしい卒業論文に関連する内容のご質問に対して、研究や動向について、私のわかる範囲でお伝えしました。

完成した卒業論文に大変感銘を受けましたので、こちらで要旨を紹介させていただきたくお願いしたところ、ご了承くださりましたので、以下に紹介します。

伊奈東子さん 清泉女子大学卒業論文.※ご本人からは、氏名等の公表について御了承をいただいております。

「医療を受けられない仮放免者たち 医療アクセスの障壁を取り除くために」

本稿では、仮放免者の医療へのアクセスに生じる壁をどのように乗り越えられるかを考察した。在留資格がない仮放免者は就労ができず、国民保険にも加入できない。8割を超える仮放免者が経済的な理由で医療機関を受診できていない。唯一の公的支援制度である「難民認定申請者に対する保護措置」も充分に機能していない。筆者は、2021年5月から2023年12月、当事者3名・支援者5名・研究者1名の計9名の関係者に対面とオンラインでインタビュー調査を行った。その結果、家族の扶養保険がある仮放免者でも、収入がないことから医療費負担を心配し、医療受診を控えていることがわかった。仮放免者は、本来は在留資格がなくても利用可能な社会福祉サービスの利用を市役所で拒否されるなど、利用しにくい状況にある。その背景として、入管とメディアによる非正規滞在者と犯罪者のイメージを結びつけるようなネガティブな言葉を使った発信が自治体職員らに認知バイアスを植え付けている可能性を示唆した。国内で難民の困窮は深刻化しており、入管法の改正でも仮放免者が医療を受ける権利が保証される見込みは薄い。帰国困難な事情を抱える仮放免者に対して在留特別許可を付与し、滞在を正規化すること、非正規滞在者への医療へのアクセスを支援する制度を構築することが必要である。また、制度改革においては、自治体や市民による問題提起も、有効な手段と考えられる。

積極性、文筆の才、矢面に立ったアクション、さまざまな面で非常に尊敬できる学生さんに出会うことができて、とても嬉しくまた私も刺激をいただきました。これからもさまざま教わりながら、ご活動を応援したく思っています。どうもありがとうございました☻

西岡 大輔(にしおか だいすけ)