2025年1月1日に、京都大学大学院医学研究科社会的インパクト評価学講座(寄付講座)の特定准教授を拝命しました。
地域社会で行われている諸活動・事業は、その活動の対象者や事業の対象者以外にも当然影響を及ぼしえます。極端な例で言えば、高齢者向けの地域の通いの場事業は、高齢者のつながりの強化や介護予防の効果だけでなく、そこに住むあらゆる人の健康アウトカムを改善でき、子どもの健やかな成長にもつながります。子どもの登下校時の見守り活動は、見守り役の大人の参加の場や役割の保持につながり、地域の治安向上などが想定できます。地域のNPOや自治会活動は、その実施者、参加者、対象者だけでなくその周辺の人々にも影響します。公園でラジオ体操を行うサークルは、サークル外の人の体操機会も創出します。医療現場で行われている福祉活動は、その援助対象者だけでなく、対象とならない人、さらには医療を必要としない人のつながりづくりや健康づくりにも貢献できます。地域の商店で行われる特別な活動は、その顧客や販売者以外にも、地域の住民にワクワクを与えてくれるはずです。
しかしこのような活動のインパクトは、これまでの事業評価において基本的にその事業対象者のアウトカムのみしか計測されず、多面的に評価されてきませんでした。事業が社会全体にどのような影響をもたらしうるのか。その事業により恩恵を受けうる人は誰か。不利を被る人は誰か。どのような追加的な対策が必要か。もしくは、どのような活動に手厚く投資すべきか。そういった多面的なインパクトを学際的に検証する講座です。
私にとっては、准教授と書く字がぎこちなく、自分はまだ力不足で背伸びの状態と感じています。肩書きに見合う働きをせねばと身の引き締まる思いとともに、自身の座右の銘を思い出しました。
「背伸びをすればいずれそれが身の丈になる」です。これは華道家の假屋崎省吾さんが、 “私は、いまの自分を基準にせずに、「背伸び」をすることをお勧めします。 そうすることで、次第にそれが「身の丈」になっていくんです。” とお話しされたことに感銘を受けた日から、ずっと大切にしている言葉です。
私自身も、社会的インパクト評価学講座の准教授として身の丈を伸ばし、役職に見合う業績を出せるよう、教育・研究に励んでいきます。今後ともご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
西岡 大輔(にしおか だいすけ)