本間理, 西岡大輔, 他. 腹腔鏡下大腸癌手術のアウトカムと所得の関連:単施設後方視的研究. 日本病院総合診療医学会雑誌. 2026;22(4):162-168.

日本は国民皆保険制度により、誰もが平等に質の高い医療を受けられる国とされています。しかし、近年の研究では、個人や地域の社会経済的状況が、がんの生存率などに影響を与えている可能性が指摘されてきました。
今回、1医療機関の外科部門と共同研究を行い、病院診療で日常的に収集可能な所得区分(=保険情報と高額療養費の所得区分)を活用し、「手術の質には所得による差は見られないが、術後在院日数には所得による差が生じている」実態を示した論文が、日本病院総合診療医学会雑誌に公開されました。
研究では、腹腔鏡下大腸癌手術を受けた患者を、生活保護利用者から高所得層まで5つの所得階級にカテゴリー分けしました。手術時間、出血量、術後合併症の発生割合については、所得階級による有意な差はありませんでした。手術そのものの質は経済状況に関わらず均質に保たれていた一方で、術後の「在院日数」には顕著な差があり、所得階級が低くなるほど在院日数が長い傾向が認められました。
この背景には、医学的要因と社会的要因がある可能性があります。低所得であるほど、慢性疾患の有病割合が高いため、術前から糖尿病などの併存疾患を抱えていることが多く、全身状態がよくない傾向がありました。また低所得であるほど、居住環境や療養環境が整いづらい結果、入院が長期化しやすい可能性が示唆されました。
単施設でサンプルサイズも小さい研究なので研究の限界はたくさんあります。今後はこのような研究を多施設で前向きに進め、日本全体の傾向を記述し明らかにしていくことが必要になりますが、医療機関で患者の所得に関する情報をシステマティックに収集し、治療後を見据えたケアを提供することが求められていそうです。健康や医療のケアに不利となる社会経済的な要因をもつ患者に対して、ソーシャルワーカーを中心とした多職種チームが関わる重要性が示されました。
以下は、GeminiNotebookによるインフォグラフィックです。論文を読む際にお役立てください。

医療の質を求めつつ、患者のケアの社会環境を考慮することの重要性を示唆する論文になりました!
本間先生、ありがとうございました!
西岡 大輔(にしおか だいすけ)

