NEW!【単著特集(1)】なぜ「ソーシャルワークと連携せずに医療ができるか!?」を書いたのか

気づき:患者さんにとっての医療への障壁

私は大学院入学前に、病院で初期・後期研修医として研修・勤務していました。特に3年目以降には、総合診療科(&救急科)の専門医の資格をとるべく研鑽を積んでいました。
まず、この道を志すきっかけとなった、私が医学部生の時のエピソードがあります。

実習中に、エレベーターのないアパートの最上階に住む、ひとり暮らしの高齢者と出会いました。その方は階段を降りることが難しい病状でした。医療が必要であるにも関わらず、その人の力だけでは、病院の入り口に立つことができなかったのです。

その方は近隣の診療所からの訪問診療により必要な医療を受けていました。病気を経験した患者は病院に来て、治療を受けるものだと信じていた未熟な医学生であった私には衝撃的な出会いでした。

医療機関が充実している都内に住んでいても、医療へのアクセスに障壁がある人がいる。その事実は私の医師としての姿勢を形作っていきました。

その後、医師として現場に出て研鑽を積む中で、医療へのアクセスの障壁には、地理的・物理的な要因以外にも多面的に存在していることを学びました。人々の貧困、孤立といったさまざまな状況や、地域の文化・規範、健康に対する価値観など、社会的な要因が健康や健康に関連する行動に大きく影響していることを多くの患者さんに教わりました。まず、その事実を健康な暮らしに関心がある人にぜひ伝えたいと思ったことがきっかけです。

学び:ソーシャルワークとの出会い

しかし、医療だけでは、社会的な要因に対応するのは難しいです。医療制度には患者さんの社会的な要因に対応するような設計は、そして医療機関にはそのような文化や習慣、しくみは十分に整っていないのが現状です。その場合、社会的な要因を踏まえた対人援助ができる専門職との連携が必要となります。

対人援助の基礎を知らない私にたくさんのことを教えてくれた専門職がいました。それがソーシャルワーカーです。ソーシャルワークの考え方や視点に私は、その後、社会福祉専門学校に入学式、実習等を通じて学びを深めていくことになりました。

ソーシャルワークの世界で学んだことを医療者にもぜひ知ってもらいたい、ソーシャルワーカーがどのような人で、どのような視点をもち、どんな価値観で実践しているのか、を紹介したいと思ったことがもうひとつのきっかけでした。

本書では、この経験から始まった私自身の学びを、「社会的処方」という言葉をめぐりながら整理しましたので、ぜひお楽しみに◡̈*✧

西岡 大輔(にしおか だいすけ)