NEW!【論文】豊中市との共同研究の成果が公開されました

武本翔子, 西岡大輔.被保護者健康管理支援事業の効果的な実施に向けたデータ利活用の取り組み. 日本公衆衛生雑誌. 2026(早期公開).

日本全国の福祉事務所で、生活保護利用者の健康支援事業(被保護者健康管理支援事業)が必須事業化されて5年が経ちました。しかし、その主な対象は40歳以上であり、40歳未満の若者や子どもの健康状態は十分に把握されてきませんでした。今回紹介する研究は、豊中市福祉事務所の取り組みを通じて、行政が持つ複数の健康データを連結し、若年層の被保護者の健康実態を可視化した報告です。

ChatGPT Pro 5.5で生成した、グラフィカルアブストラクト
(AIによる作成でありあくまでご参考まで。精緻な記述やデータは論文でご確認ください)

豊中市福祉事務所では、生活保護を利用する子ども・若者にも注目し、福祉事務所以外の行政データも活用しながら取り組みを進めてきました。西岡はそこにアドバイザーや嘱託医として関わってきましたが、その取り組みをまとめたものが公開されました。

今回の論文では、豊中市が所有する子どもの予防接種・30歳代の市民健診・学校健診・乳幼児健診等のデータを生活保護システムのデータと結合して、現状を把握することを目指しました。

その結果、生活保護世帯の子どものMR(麻疹風疹)ワクチン接種率の低さや、生活保護を利用する若者(30代)の肥満や生活状況、健康状態、子どものう歯や肥満&痩せの傾向などが把握されました。生活保護利用者の課題だけでなく、同事業のハード面・ソフト面の課題もある程度見えてきており、その点も整理しました。

これらの結果は、健康上の不利が成人後に突然生じるのではなく、子どもや若者の時期から積み重なっている可能性を示しています。このことから、利用者の健康支援においては、より若い年齢層への健康づくりの重要性が示唆されました。

本研究から、若年層への健診受診勧奨、ワクチン接種支援、子どもの肥満や歯科保健への介入など、ライフステージに応じた健康支援の必要性が明確になりました。利用者の健康支援には、福祉事務所だけでなく、保健、教育など複数部署の連携が欠かせません。今回の豊中市の実践は、見えにくかった利用者の健康課題をデータで可視化し、早期からの支援につなげる根拠を作った好事例だと思います。

生活保護利用者から見える健康課題は、そこに住むすべての人の健康課題です。利用者では、生活上の困難が重なることでそれが最も見えやすい集団となっているにすぎません。福祉事務所の課題ではなく、市の課題であるという認識が広がってくれればと思います。


多くの自治体でこのような活動が広がっていくことをとても期待しています!

西岡 大輔(にしおか だいすけ)