後編です。社会福祉の世界を自分なりに学ぼうと思い、2018年から江戸川学園おおたかの森専門学校(EDOSEN)の社会福祉士養成課程で学び始めました。現実的に通うことが可能だった通信課程を選択しましたが、ここで厳しく指導してくださった先生方に、“医学”の見方を解きほぐし、“社会”の見方をインストールしてもらったと実感しています。
<専門学校へのダブルスクールは大変だった。でも自分を形作ってくれた>
専門学校では、診療と大学院での研究とを並行しながら(!)実習に行くことになりました。これが大変だったのを覚えています。実習のない日を診療と研究に充て、ほぼ休みのない、住み込みに近いような1ヶ月を過ごしました。とても濃い毎日で、ここで出会った一人一人が今の私を形作っており、顔と名前を覚えている方も多くいます。そして、この経験は私の臨床での向き合い方や研究の視点をガラリと転換してくれ、今も活き続けています。
結果的に、大学院の博士論文を執筆・修正しながら、社会福祉士国家試験を受験することができました。当時(2020年末)は大阪医科大学(現・大阪医科薬科大学)に勤め始めたタイミングでした。大阪に引っ越しもしたし、COVID-19の流行期でさまざまな制約もあったので、大変なことも多かったのを覚えています。そうして社会福祉士の資格を取得し、現在の活動に至っています。
<社会福祉士取得後の自分自身と周囲の状況の変化>
前編でも書いたように、社会福祉士を取得しようと思った理由の一つには、福祉やソーシャルワークの側から見た自分へのハードルを下げたい、という利己的なところがありました。実際に、社会福祉士を取得したことで、社会福祉に関わる団体やソーシャルワーカーのみなさんから声をかけていただく機会は増え、社会福祉士の養成課程を有する大学や専門学校の講義も担当してきました。
もちろん、資格があるからソーシャルワークがわかるわけでも、社会福祉の世界にそのまま受け入れてもらえるわけでもありません。わからないこと、初めてなことばかりの毎日です。ただ、自分自身がその教育課程に身を置き、同じ言葉を学び、その中で大切にされている価値観に触れたことは、ソーシャルワーカーのみなさんと話すうえで、とても大きかったように思います。その延長線上で、日本医療ソーシャルワーカー協会との関わりも深まっていき、理事への立候補を打診されました。

正直なところ、医師である自分が医療ソーシャルワーカーの職能団体の理事に立候補してよいのだろうかという迷いもありましたが、理事となりますます学びの機会をいただいています。
振り返ると、社会福祉を学ぶ前に少し期待していた「福祉の側から自分へのハードルを下げたい」という、やや利己的だった動機は、実際にその後の自分の活動や出会いにつながっていきました。日本社会福祉学会の全国大会委員・査読委員や貧困研究会の編集委員などを経験することにもつながっていきました。
<社会福祉に関心のある医師は多く存在している>
もちろん観測範囲に限りますが、医師と社会福祉の双方の資格を持つ人は少しずつ増えています。医療に“社会的な見方”を広げていくうえで、社会福祉を学ぶ経験はとても刺激的でした。そして、その経験が今回の単著『ソーシャルワークと連携せずに医療ができるか!? 臨床現場から考える社会的処方』の内容にもつながっています。
・医療者が“社会”を見るとはどういうことなのか?
・ソーシャルワーカーはどのような視点をもち、どのような価値観で実践しているのか?
・社会的処方という言葉はどのように位置付けられうるのか?
興味を持ってくださった方に、ぜひ読んでいただければと思います。そして、社会福祉を学ぶこと自体に興味を持った医療者の方がいれば、ぜひチャレンジしてみてください!
西岡 大輔 (にしおか だいすけ)

